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正直、違わない。全然、違わない……けど
あれ、何か
「修一、狭いんだけど」
「そう?」
「ちょっとこの距離は、おかしくないか」
俺達の間に、少しのスペースも存在してはいなかった。俺の膝には、既に修一の膝がピッタリとくっ付けられていて。俺の顔に修一の陰が掛かる位には、凄く近い距離に修一の顔がある
「じゃあ、キス以外で考えるとしたら、さとはどんな方法で試す?」
「キス以外、て」
「例えば、だよ」
例えばどんな方法があると思うかと、修一は俺の疑問なんて無視して言葉を続けた。こんなに距離が近くておかしいって思うのに、修一の真っ直ぐな目に見つめられたら、何も考えられなくなる
「手……とか」
「ん?」
「手を繋いだり。それから、抱き合ってみたりとか。もし試すなら……男同士で抱き合っても気持ち悪く感じないのか、気になる、かも」
……うん。もし、試すって考えるなら、それがいい
手を繋ぐっていうのに至っては、試すっていうよりもしてみたいっていう願望に近いかも知れない。キスよりも格段にハードルが低いから、俺にとっては一番現実的な願望だ
修一と、手を繋ぎたい。普通に繋ぐんじゃなくて、恋人みたいに指を絡めて
触れた指から、修一の体温を感じてみたい。修一の手は俺よりも少しだけ大きくてあったかくて、ちょっとゴツゴツとしてて
親友として手を繋ぐ事はまず無理だろう。男同士で、そんな事
だから余計、繋いでみたいと思う。もし、付き合えるってなったら……多分真っ先にそれが浮かぶ
まあ現実問題、そんな事しないし、出来ないんだけど
俺が呟いた言葉を聞いた修一は少しだけ目を見開いた。その後視線を下へ落とし俯いて、およそ1分程の時間が過ぎた後、何かを思い立った様に不意に顔を上げた
「じゃあ、これ、どう思う?」
右手に、温かな感触を受けたのは、どう思うかと聞かれたその瞬間だった
ゆっくりと、ゆっくりと、その熱は俺の熱と交わる様に重ねられた
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