【6】

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左肩を引き寄せられて、俺は修一の方へ上半身を傾けた。修一は元々こちらに身体を向けていたから、必然的にお互い向き合う体勢になる 繋いでいた修一の左手が、ゆっくりと俺の右手を解放した。でも俺は、その事に安堵する暇すらも与えてはもらえなかった 次の瞬間、修一の両腕がこちらへと伸びてきて、俺の身体を包み込む様に背中へと回された。強くはないけど優しくもない力加減で抱き締められて、途端に増した大好きな匂いにぐらりと視界が揺れた 修一の髪が首筋に掛かってくすぐったい。修一の息遣いが、耳の直ぐ側で聞こえてくる。そんな、距離感 お互いの心臓の音が聞こえてしまう位身体を密着させて、どちらとも言えない熱が、俺の身体を痺れさせる う、わ……ヤバい。目眩がする 俺は、きっと夢の中に居る。でなければ、修一が俺の手を握ったり、こんな風に抱き締めるなんて事をする筈が無いんだ それはまるで、蜂蜜の海に突き落とされた様な感覚だった。吐きそうな程に甘くて、甘ったるいのがさっきよりもずっと、しつこい程に絡み付いて離れない こんな感覚は初めてだった。地に足がつかないみたいにふわふわと浮いている様で、それでいて海の奥底で呼吸出来ずにずっともがいている様で 堪らなく、息苦しい ああ、今の状況を、俺はどう捉えたらいい……? 身体も脳も、とろん、と蕩けてしまいそうだ。幸せだと、俺は今幸せの中に居るんだと全身が震え上がる 俺は自然と、そう無意識に修一の背中に手を回しかけていた。これは自分のものだと、強く、キツく抱き締め返そうとしていた
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