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「やっぱり顔、真っ赤になってる。これってさ、酔ってる訳じゃないよな。さとはビール殆ど飲んで無かったし」
「これは、違っ」
「いや、見るからに真っ赤だよ。自覚ないの?」
厄介な事に、自覚はある。だけどそれを認めたくなくて、俺はグッと押し黙った
「図星か」
「うるさい。わかってても言うなっつの」
例え口で否定してたとしても、この顔を見られた時点で言い訳なんて意味を成さない
こんな事なら、もっとビールを飲んでおくんだった
20歳も過ぎた男が、こんな赤ら顔なんて、本当に最悪だ。恥ずかしい。穴があったら入りたい
そんな簡単に触れられるような感情は持ち合わせていないのに、お前がこんな風に抱き締めたりなんかするから、いけないんだ。もう、頼むから、俺の顔見んなよ
「それでさ、どうだった?」
「何が」
「俺と抱き合ってみて、気持ち悪く感じたかそうじゃないか」
どっちだったのか教えて欲しいと、修一は少しだけ首を横に傾けた。それを視界の隅に捉えながら、俺はそれでも顔を上げる事が出来ない
気持ち悪いかどうか、なんて、そんなもの試さなくたって答えは最初から出ていた。気持ち悪くなんてない。ない、けど
ああ、もう、何でこんな事になってんだ
「手、繋がれるのも、抱き合うっていうか抱き締められるのも……気持ち悪くは、ない、けど」
「けど?」
「いきなりすぎて、なんかもう、訳わかんない」
修一以外の奴なら、簡単に返答を返せたのに。こんな風に、何も考えらんなくなる事なんて無かったのに
既にいっぱいいっぱいで、キャパなんてとっくにオーバーしてて、修一に何て返事していいかもわからずにただただ訳がわからないんだと言葉を漏らす
みっともないけど、自分でもどうしようもないんだ。今はただ、気持ち悪くないと正直な気持ちを伝えるだけで、精一杯だ
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