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俺がそれ以上何も言えずにいると、俺を心配したのか、修一の優しい声が耳に届いた。心地よく響くその声に、自然と強張っていた筋肉が緩む
しかしそれは、油断を生むきっかけにも繋がっていて
「なんか、すっげえ震えてるけど……大丈夫か?」
「…………っぁ」
不意に、露出された首筋にほんの少し、修一の指先が触れた。まるで、雷を落とされた様な、強い衝撃が俺を襲う
目の前が、一瞬真っ白になった。いきなり与えられた刺激に身体がビクリと反応して、油断していた俺の口からは、小さな声が漏れ出した
咄嗟に口を塞いだ所で、もう遅い。例えその声がほんの小さな声だったとしても、これだけ至近距離に居れば修一の耳にだって届いてしまう
驚く程に、甘い声。吐息混じりの熱を含んだその声は、まるで自分の声じゃないみたいだった
ほんの少ししか触れていない指先に感じてしまった事も、甘く色付く声を漏らした事も恥ずかしくて、俺は余計に顔を真っ赤に染め上げた。これは、まずい。本当に、まずい
「……今の」
「触られんの、慣れて、ないんだよっ……」
だからいきなり触られてビックリしたんだと、口を押さえた状態で必死に言い訳をした
くぐもった声だったが、恐らく聞き取れた筈だ。これが言い訳になってるかどうかも怪しいけど、他に何も思いつかなかった
男のこんな声聞いたら、絶対引くに決まってる。しかもずっと一緒に居た幼馴染みの声なら、尚更だ
返ってくるであろう反応に怯えながらも、恐る恐る修一の顔色を伺う。気持ち悪いと言葉にされたらどうしようとか、色々な思想が一気に頭の中で渦巻いていく
しかし揺らぐ瞳に映った修一は、俺の予想した表情をしておらず、むしろ何故か狼狽える様に目を泳がせていて
その表情は直ぐに無表情へと変わったが、どこか困惑している様子は変わらない
「もしかして、首筋弱い、とか?」
「……っ、……!」
「この手、退かして。ねえ、今の声、もう一回聞かせてよ」
「い……、や、だっ……」
今度は、紛れもない意思を持った指先が俺の首筋を這う。何かを確認するみたいに、上から下へゆっくりとなぞられて、ゾクゾク、とした感覚が全身を駆け巡った
修一の言葉の意味は理解出来なかったが、俺は再び声を出すのが怖くて口を塞いだまま必死に首を横に振った。今ここでこの手を離したら、きっと、またさっきみたいな声が出る
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