【6】

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グッと、押さえ付けるみたいに頭と顎を持つ手にさらなる力が込められた。俺は自由な両手で修一の身体を押し返すけど、やはり態勢の問題なのか上手く力が入らずビクともしない 言葉に出来ない恐怖が、俺の心をじわじわと蝕んでいく。いつも優しい修一のいつもとは違う表情と行動に、修一の感情が読み取れず身体をぶるりと震わせた 「男相手にこんな事思うのはおかしいのかも知んないけどさ。なんか今、さととすっげえキスがしたい。キス、していい?」 「なに……、言ってっ……!」 「俺もさとと手え繋いだり、抱き合ったりしても全然平気だったんだ。だからさ、このまま試さねえ?キスも平気か、どうか」 そう言って、修一が俺の唇に添えていた親指を退かした。このまま修一が少しでも顔を前に出せば、簡単に唇と唇がぶつかってしまう 修一の試そうよという言葉の意味を理解したその瞬間、俺はこれでもかという位暴れ、もがいた 「キス、ってっ!ちょ、ま、ふざけんなっ……!誰がキスなんかっ」 そんなもん、されてたまっかよ。これ以上、修一の前に醜態を晒せというのか。男が、男に耳元で囁かれただけで感じて声出して。しかもその顔を間近で見られて その上キスなんて、俺に修一が好きだと告白しろとでも言ってるみたいじゃないか。キスなんてして、隠し通せる訳がないんだ それにキスをして、もし、男がダメだと自覚されたら?キスしてみて、生理的に無理だったと言われたら……? 男なんかとキスするなんて気持ち悪いと思われたら……僅かにしか残されていない希望も望みも全て、断ち切られてしまう 男から告白をされただけじゃ気持ち悪いと感じなかった修一だって、キスをしたら心境が変わるかも知れない。やっぱり、女じゃないとダメだって そんなの耐えられない。キスなんて、したくない 「少しだけ」 「少しって何だよっ、ていうか離せ。も、触んなっ……!!」 心の底から、声を振り絞った。いつもより声を張り上げて、修一に触るなと訴える その言葉に、修一の動きがピタリと止まった。そして俺を押さえ付けていた力が、少しだけ緩む。俺は修一が止まってくれた事に、内心安堵した ほんの、一瞬だけ 「さとは、いっつもそればっかり。もう、黙って」
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