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それでも泣けなしの理性が、俺に逃げろと言ってくる。修一の腕の中で力なくもがいて、嫌だ嫌だと首を振った
「もっ……ほんとに、やめっ……」
修一は俺の抵抗を嘲笑う様に、耳にふう、と息を吹きかけてきた。俺はそれだけで、また甘い声を上げてしまう
「……ふあ、ぁっ……!」
背中にゾクゾク、とした感覚が走った。頭が、ショートするかと思った
普段なら、息を吹きかけられただけではここまでならないだろう。しかしあんな激しいキスをされた後では、身体に与えられる刺激は全て快感へと変わってしまう
無理だ、逃げ出したい、こんなのもう、耐えられない。そんな思いから、やめて欲しいという言葉が自然と口から漏れる
全身を震わせる俺に、腰に響く低い声が、嘘つきだなと言って優しく俺を堕としていく
「また、噛んでるよ。下唇」
次の瞬間、また、唇を塞がれた
俺は修一の背中を何度も叩いて、抵抗とも言えぬ抵抗を繰り返す。この抵抗が、無意味だとは思いたくない。でも、もう限界だ
背中を叩いていた筈の手は、いつの間にか修一の洋服を握り締めていた。むしろ縋るようにしがみついて、無我夢中で修一の舌に自分の舌絡めて
ダメだと頭では思っていても、やっぱり身体は正直で。俺は欲していた。修一から与えられる快楽を
やめたいのに、やめないで欲しい。矛盾した感情が入り乱れる
本当に、なんで、こんな事になったんだっけ
ダメなのに、こんなのおかしいのに、修一のキスには贖えない何かがあって
修一とのキスは、想像していたよりも甘いけど、それ以上に切なくて苦しくて
泣きたくなる程に、気持ちいい
ああ、どうしよう
この場で死んだって構わない位、俺は今、この上ない多幸感に包まれている
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