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 タツオはさっと一段飛ばしで屋上に続く階段を駆け上がった。開いた扉から秋の風が吹いてくる。サイコがあたりに人がいないのを確認していった。真剣な表情だ。 「昨日の夜、兄と話をしたの」  タツオはうなずいていった。 「ぼくとの試合のことをなにかいった?」  タツオは敏感になっていた。幼馴染(おさななじ)みの少女に、決勝戦の敵に向かって、自分に手心を加えてくれと頼まれるのはまっぴらごめんだった。美少女は淋しそうに左右に首を振る。 「ううん、そんな話はしていない。危険なのはタツオだけじゃないもの。大叔父(おおおじ)の東園寺寄親(よりちか)さんはタツオのお父様と闘って、再起不能に近い大怪我をしているし、わたしはお兄ちゃんのこともタツオと同じくらい心配してるよ。あまり話はあわないし性格はぜんぜん違うけど、ふたりだけの兄妹だから」
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