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「なんだ、貴様! 割りこみか。どこの1年坊主だ……」  タツオよりも20センチ近く背の高い先輩だった。ブドウパンに埋めこんだレーズンのようなつぶらな瞳で、タツオをにらみつける。 「おまえは……逆島(さかしま)断雄(たつお)」  巨漢の上級生と目があってタツオも思いだしていた。この人は後藤(ごとう)耕治郎(こうじろう)との予選で応援にきていた相撲部の主将だ。巨漢が見えない壁にでも押されるように一歩引いて、道を譲ってくれた。  ジョージが軽く頭を下げた。 「すみません、先輩。友人が先に並んでいて、順番をとっていてくれたんです。失礼します」  入口を通り抜けざま、タツオの制服の袖(そで)を引いた。 「さっさといくんだ。タツオもなかなかだな。こんな先輩まで引き下がらせるなんて」
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