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「ぼくも香り高いウルルクコーヒーを」  さすがねえ、隣りの女子がうっとりと漏(も)らした。クニが頭を押さえながら、ドスの効(き)いた声でいった。 「うるせえ、おれたちは見世物じゃないんだ。あっち向いてろ」  クニの名も発表された上位20傑には入選していない。注文をとったサイコと丸美がいってしまうと、テルがぼそりといった。暁島会(ぎょうとうかい)から送りこまれたこの男も正操縦者候補のひとりである。 「タツオ、ジョージ、おまえたちは対カザン作戦をなにか立てたのか」  ジョージが明るい声でいった。この少年はいつでも上機嫌に見える。 「ああ、ぼくのほうはひとつだけある。タツオは?」  一週間はあまりに短かった。タツオはあの対流する虹の球体のなかに入る改良型「止水(しすい)」しか訓練していない。あれは秘伝の進化系なのか、カザンの「呑龍(どんりゅう)」に効果があるのかは未知のままだった。ゆっくりと首を横に振る。
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