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「作戦なんてない。自分にできることをやるだけだ」
テルがしばらくじっと目を覗(のぞ)きこんできた。破顔していった。
「いい表情だ。優柔不断のタツオも決心が固まったようだな」
普通の少年の倍ほど広い肩幅をしたテルが、窓の外に目をやった。秋晴れの空は高々と澄み、筆で描いたようなかすれた雲を柔らかに浮かべている。
「今日は命のやりとりをするにはいい日だ。おれが最初にカザンと当たらせてもらう。逆島家および暁島会の宿敵だ。及ばずながら一矢(いっし)は報いるつもりだ」
テーブル越しに手をさしだしてきた。ジョージが握り、続いてタツオも分厚い手を握り返した。
「もしこの学校を辞めなければならないくらいの重傷を負ったら、おれの敵討(かたきう)ちはおまえたちに任せた。きっと恨(うら)みを晴らしてくれ」
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