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明るく笑って、そういった。タツオはそのとき気づいた。テルは万が一にも勝ち目はないとわかっているのだ。東園寺家の秘伝はそれほど恐ろしい技である。それでも暁島会と自分の誇りをかけて、あと2時間もすればカザンとの死闘に向かわなければならない。タツオはなにもいえずにただうなずくだけだった。
「ウルルクコーヒー、お待たせしました」
頭上からコーヒーカップがおりてくる。サイコの手首の裏側の青いほど白い肌が目の前を通った。サイコが耳元で囁(ささや)いた。
「あとで屋上の踊り場にきて」
タツオは視線だけで返事をすると、香り高いコーヒーをひと口すすった。ウルルクで戦死した父は亡くなる前にこんなコーヒーを飲んだのだろうか。タツオは胸のなかだけでそう考えた。
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