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「そこまで!勝者、『ロラン・セラヴィー』!」
「ありがとう……ございました」
相手の返答はない。ただ憎々しげに僕を睨んでいるだけだった。
ああ、またこの目か。
中等部に上がってから、この目を向けられることが多くなった。というか、初等部ではこの視線を感じたことがない。
というのも、
「チッ、『無能者』が……」
この不愉快なレッテルの所為であろう事は間違いない。
「よっ、ロラン!お疲れさん!」
「っと……!グレンか……」
突然後ろから肩を組んできた赤髪の男子。僕の親友、『グレン・アルロイド』だった。
「なんだよ、元気ねーなぁ!またあの貴族の坊ちゃんに何か言われたのか?」
「いや、それは……」
「ったく、ホントに嫌なヤツらだなー、貴族ってのは」
僕の返事を聞く前に、グレンは大声で貴族への不満を口にする。
かれこれ15年以上の付き合いになるんだけど、人の話を聞かない所は治ってくれないんだよなぁ……。
「あのような者たちで貴族を一括りにしないで貰いたいな、グレン」
「あ、ヴィンス」
彼、『ヴィンセント・レブンハート』は名門レブンハート家の長男で、正真正銘の貴族である。ついでに、僕たちの友人だ。
「だってアイツら、ロランの事をバカにしやがるんだぜ!?戦っても勝てねーくせに!」
「だから一括りにするな、と言っているんだ。僕はロランの事を認めているし、奴らと同じだなどと思われたくない」
「2人とも、持ち上げすぎだよ。僕は君たちより弱いし、それに……」
「止めろ、ロラン」
グレンは組んでいる肩に力を込め、僕にその先を言わせない。僕は流石にもう慣れたから気にしてないんだけど、2人は僕が『無能者』のレッテルを貼られた理由が気に入らないらしい。
「次、ヴィンセント・レブンハート」
「……それでは、僕は行ってくるよ」
「うん、頑張って」
ヴィンスは先生に呼ばれ、颯爽と歩き去っていく。貴族というのはそういうのも様になるものなんだろうか。
……ヴィンスと出会った当初、その凛々しさに憧れていたのは僕だけのささやかな秘密である。
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