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怪我をしていたのは、僕を含めた前衛組の3人だけだ。アーサーさんが上手くベヒーモスの気を引いていたことや、そもそも僅かな被弾が命取りな相手であったこともあり、そういった被害だけで言えば本当に少ない。
そのため治療もすぐ終わり、リュウは『帰るぞ』とさも当たり前のように僕の頭に乗った。
「ま、待ってよ。ヴィンス達が魔力切れで動けないから……」
『わかってる、運ぶのは任せろ。シチュエーション的には慣れてる。……っと、その前に聞きたいんだが、あのデカいケダモノは何か使い道があったりするか?』
「あ、うん、依頼外でもあんな強力な魔物なら、特別報酬が出るはずだよ」
ギルドの仕組みについて書かれた本をちらっと読んだだけで、昨日の説明にも無かったから、ただの希望的観測になるけど……。
『よし、メリットがあるならそれでいい。……ちょっと集中するから、話しかけるなよ』
そう言ってその大きな尻尾で体を抱くように丸くなる。
『《クラウディ・リフト》』
そうして唱えたのは、聞いたこともない魔法。
その瞬間、ヴィンス達後衛組とベヒーモスの死骸がそれぞれ霧の様なもやに包まれ、見えなくなる。
「え……」
何が何だかわからないうちに、ヴィンス達の身体がそのもやごと浮き上がった。更に、あのベヒーモスの巨体も、まるで重さを感じさせないかの様に、ふわふわと宙に漂っている。
その光景にまたしても呆けていると、前脚で頭をはたかれる。『行け』ということだろう。
その指示を受け、「では、行きましょう」と2人に声をかけ、歩き出す。
「……セラヴィー君、色々と訊かせてもらってもいいかい?」
来た。そりゃ当然だ。さっきからずっと難しい顔をしてたし、王国騎士団としては、僕の頭の上の、ベヒーモスすら単体で倒す得体の知れない獣について知る必要があるんだろう。
「森の外にある野営用の小屋まで待ってもらってもいいですか?この魔法に集中したいそうなので」
「あ、ああ、承知した。では周囲の警戒は任せてくれたまえ」
得体の知れない赤いのを引き連れる僕も充分怪しいだろうに、その護衛を引き受けてくれるというアーサーさん。本当に頭が下がる。
森の中とはいえ、風向きはそうそう変わらない。それを頼りに、僕とグレン、そしてアーサーさんは、複数の白い塊を引き連れて、森の出口へ向けて歩いて行く。

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