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目を開けるとそこは別世界でした。
ってか?
「どこよ。……ここ」
さわさわと梢の音がする。
目の前に広がる空はどこまでも青くて、こういうのを晴天っていうんだなっとか思ってみたりする俺。
救いはどうやら無事に自分に身体に戻っているらしいこと。
見なくとも感覚でなんとなくわかった。
なじみにある手足。なじみのある魔力。
全て俺自身にものだ。
だが妙に身体が怠い気がする。
入れ替わりの後遺症だったりするのだろうか。
だとしたら迷惑な話だ。
怠いのでそのまましばらく仰向けに転がっていると、脇腹を何かでツンツンとつつかれた。
痛くはないので刃物の類ではないだろう。
害意も感じないのでひとまず無視することにする。
だって、怠いから。
なのに。
ツンツン。
ツンツン。
ツンツン。
「……しつこい!」
あまりのしつこさに堪忍袋の緒も切れるというもの。
ムクリと上半身を起こして怒鳴ると、俺の傍らに座り込んでどっかから拾ってきたらしい木の枝を握りしめていた魔王は相当驚いたようだった。
「わわわっ」
と声を上げてぺたんと尻餅をつく。
尻餅をついた拍子に豊満な胸がゆさゆさと揺れる。
ビバ!尻餅!ナイス!
至近距離でいいもの見せてもらったと、俺は心中で手を合わせた。
そんな俺の邪な心など知るはずもない魔王は、尻を叩きながら立ち上がると殊勝な態度で頭を下げた。
「その、すまぬ」
「普通倒れてる人の脇腹木の枝でつつくか?」
速攻で突っ込みを入れてやると、魔王はあからさまにうっ、と詰まった。
「す……すまぬ。……その、全然動かないから、あの……入れ替わりの負担がきつかったのかと……」
いや、それまったく枝でつつく理由にならないから。
「で?」
「む?」
む?じゃねえ!
「こんなとこに連れてきてどういうつもりだ?」
理由如何によってはそっこーぶち殺しだ。
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