16人が本棚に入れています
本棚に追加
「うおおおおおお!」
俺は雄叫びを上げて最後の攻撃を繰り出した。
俺自身の背よりも長い漆黒の刀を相手の胴体に向けて横ざまに振りぬく。
優秀な仲間のサポートによって相手の胴体は無防備に晒されていて、俺はただ全力で振りぬくだけでいい。
それで、この戦いは終わる!
すれ違いざまに刀を振り、両手で矢の刺さった左目を押さえ呻いていた相手__魔王の側近四天王の筆頭ドドリアンの背後に回り込むと、俺はフッとニヒルに笑った。
「安心しろ、峰打ちだ」
決まった。
言ってやった。
一度言ってみたかったんだ、これ。
「なーんて、うっそだぴょーん」
俺の言葉と入れ違いにドドリアンの脇腹から大量の血しぶきが飛ぶ。
そのまま地に倒れ伏したドドリアン。
念のため足で仰向けに転がして腹を蹴ってみる。
ついでに顔も踏みつけてみよう。よし、死んでるな。
確実にドドリアンが死んでいるのを確認した俺は、仲間たちの顔を見回して親指を立ててみせる。
ほっと身体の力を抜く仲間たち。
「ってか、カイトは何でこんな時までふざけてんの?」
ペタンと座り込みながら金髪碧眼の美少女が言う。
胸元には弓を抱いている。弓使いのビビアン。先ほど見事にドドリアンの左目を射貫いて隙を作ってくれた頼れる仲間の一人だ。
仲間内ではただ一人の異性で、いかにも容姿的にもポジション的にも恋に落ちそうな相手だが、いかんせん俺の好み的には身長が高すぎる。
ほとんど俺と変わんないし。
なにより胸が足りない。
うん、悪いけどやっぱり胸は大事だよ。
「これで後は魔王一人ですね」
「おう!だな!」
バルサの言葉に俺は頷く。
魔法使いバルサ。主に回復と援護を受け持っている小男だ。
一番離れたところでいまだに柱の後ろに隠れている。
勇者御一行には不釣り合いな奴だ。若禿だし。
何で俺アレを仲間に入れたんだっけ?
「もう少し、もう少しでこの戦いも終わるんですね。……これできっとアマリの心もゲットできますよね」
なんか一人でぶつぶつ言ってて気持ち悪い。
ああ、そうだ。
バルサは片思いの女を落とすために勇者の仲間って肩書を欲しがったんだった。あんまりしつこいから断るのも面倒になったんだ、俺。
最初のコメントを投稿しよう!