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「まだ最後の関門が残ってますけどね」
気が早過ぎますよ、とビビアンがバルサをいさめた。
立ち上がったビビアンは視線をまっすぐに前方に続く長い階段とその先にうっすらと見える巨大な扉を見据える。
すらりとした立ち姿ははっきり言ってかっこいい。
ビビアンはきっと街に戻ったら女の子にもモテるな。「お姉さま」なんつって。
「ビビアンの言う通りです」
生真面目さがにじみ出るような固い声とともに、筋肉質の巨漢が俺の前にでる。
いかにも騎士、といった甲冑に槍を持った中年。
アルフレッド・ボルム。
俺たち勇者御一行のお目付け役。
貴族の跡取りで、王国騎士団の団長でもある。
せめて一人ぐらいはまともな身分の人間を連れて行ってくれと王様に泣き付かれて仲間に加えた。
まあビビアンとバルサは庶民だし、俺だって勇者って言ってももとは田舎のわんぱく小僧だ。
王様の言ももっともである。
俺達はしばらくその場で休憩してから、長い階段の攻略に取り掛かった。
とてつもなく長い階段だ。
これだけ長い階段が建物の中に存在しているというのはさすが魔王城といったところか。漆黒の磨き抜かれた石造りの階段は見たところ数百段以上はあるだろう。それがまっすぐに上に伸びている様は圧巻だが、それだけに、萎える。
俺はともかく、他の皆はこれまでの戦いですでに疲弊しているし、俺だってまだ体力には余裕はあるもののひたすら階段を上り続けるのは精神的にきつい。
景色もほとんど変わんないし。
そもそもひたすら同じ動きをするっていうのは苦手なのだ。
飽きてくるし。
そうか、これはきっとアレだな。
魔王による精神攻撃。
もうやだ疲れた帰ろって回れ右させようって腹か。
だが回れ右するにもすでに半分近く上ってしまったから、降りるのも怠い。
しかも城の外は王国軍と魔王軍との戦闘中だ。
ああ、面倒くさい。面倒くさい。
本気で階段上りに飽きてきたため、頭のなかでぐだぐだとそんなことを考えていた俺の頭に、ふと妙案が浮かんだ。
いわく、一気に跳んでったらいーんじゃん。という案だ。
よっしゃ!と気合を入れなおした俺はいったん立ち止まると屈伸をして足を伸ばした。
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