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小柄な身体にゆるく波打つ腰まで届く長い黒髪。
薄紫の瞳に、白い肌、淡く色づく唇と頬。
文句なしの美少女だ。
ビビアンも美少女ではあるが、種類が違う。
ビビアンが凛々しいお姉さま系なら、こちらはまさしくお人形。
ホントに生きて息してんのかと疑いたくなるほど整いすぎて造り物めいている。んで、ちょっとロリっ娘。
小柄なのも相まって非常に幼く見える。
が、もし少女が魔王なら少なくとも俺よりは確実に年上だ。
魔王なら、だが……。
人は__人型の魔族は魔人と呼ばれるのだが__見かけだけで判断はできない。
なのでもちろん目の前の巨乳ロリっ娘が魔王であってもおかしくはない。
ないが。
違和感が消えない。
なんだ?
俺はゆっくりと玉座に近づいていきながら違和感の正体の探る。
魔王らしき少女は慌てず騒がず静かな視線で俺を見ている。
とても勇者と魔王の最終決戦とは思えないほどその場は静かだ。
俺は玉座から数歩離れたあたりで立ち止まる。
といっても、十分射程距離内だ。
やろうと思えば一息で首を掻き切れる距離。
なのに、少女からはなんの圧迫感も敵意も緊張も感じられない。
ん?圧迫感?
そうか、それだ!
さっきから感じていた違和感の正体。
玉座に座る少女からは魔王相手ならば当然感じられるはずの圧迫感がまったく感じられない。
というか魔力がほとんどないのか。
魔族は概ね人間と比べて魔力が強い。
魔王ともなればその魔力は雑魚とは比べようもないはずだ。なのに、少女からは雑魚以下の魔力しか感じない。
上位魔人ならばある程度魔力の放出を押さえることもできるが、これはそんなものじゃない。
偽装でもなんでもなく、少女は雑魚以下の魔力しか持っていないのだ。
なんだこれは。
困惑する俺に向かって不意に少女が口を開いた。
「何を固まっておる。疑っておるのか?私が魔王であるか」
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