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そしてもっとも気がかりなのが、ダキア西方の状況だ。敵将ハドリアヌスは予想以上だ。こちらよりも早くしかも確実に制圧してきている。すでにレシツァが陥落し西方の3割が制圧もしくは降伏したらしい。しかもこちらは懐柔策だ。金貨をばらまき、商人を引き連れオリエントからの特産品を持参して土豪たちを手なずけ、奴隷を多数引き連れて道路を整備しているという。しかも商人や移住者は退役軍人で固められており、こちら側の土豪や盗賊の襲撃から住民や都市を軍隊の援護なく退けているため、住民から支持されていてなかなかこちらの協力者が自由に動けない。なので、こちらの情報も少ない。しかも、噂を聞きつけた東方の住民に動揺が広がっているいう噂も入ってきている。おそらくローマが流しているのだろう。そのため住民が西方や北方に逃げるために街道にあふれてこちらの補給を邪魔している。もしかして、トライアヌスもこちらの兵站を弱らせること、情報が集めにくくなるようにここまで仕込んだのだろうか・・・まさかな・・・だが、西方の状況はかなりよくない。当初は2万集める予定の兵がまだ1万にも満たないという。敵のほうが兵数で勝っており、さらには天然の要害であるレシツァが押さえられてしまい、周辺もかなり寝返っている。しかもダキア側に騎馬がいないので平地で会戦するようなことにでもなればこちらの損害は甚大だろう。息子達には会戦は避けること、兵数で不利ならば一旦サルミゲトゥーザまで退くように早馬を走らせる。
まぁ、戦争はうまくはいかないものだ。まずはこちらの状況を有利に運ぶことが最優先だ。そしてデゲバロスは彼の本陣の兵に出陣の準備を整えるよう下知した。
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