第1章

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同日 ローマ領内 ヴィミナティウム   ハドリアヌスはトラヤヌスと示し合わせたとおりヴィミナティウムを船で出撃渡河してレデラータ(現パンチェポ)西岸へ上陸。特に抵抗もなかったため、市民の代表者へは金貨を、市民には銀貨を与えてローマへの帰属を誓わせた。さらに商人たち(退役軍人)をつれてきていたためオリエントの品々やゲルマニア、アフリカからの特産物を運びこませて格安で提供した。周辺部族へも宣伝させることで帰属を誓う部族には金貨と特産物を。抵抗する部族にはゲルマン騎兵を向かわせて根絶やしにしていった。レデラータでの一件以来抵抗も少なくほぼ無抵抗で進軍していくことができた。たまに盗賊や抵抗する部族の襲撃を受けるものの兵站自体は退役軍人中心で編成された商人の加勢も加わり概ね問題なく運ばれている。そして数日のうちに彼はレシツァを包囲降伏させた。  もちろん、帰属した都市や村が攻撃を受けた場合は途中3箇所に騎兵1千ずつを待機駐屯させているのでそこから援軍を出させ、住民には賃金を払い街道整備を手伝わせた。金貨とオリエントの特産品で懐柔する作戦は成功するかに思われたが、レシツァ攻撃前にティビスクム(現カランセベシュ)にダキア軍集結の報を聞いていたためレシツァを2日で降伏させた。レシツァはダキア側から兵と兵糧の提供を求められていたため、ローマからの金貨の提供を断る理由はなかった。だが、利害の関係は利害で壊れることを彼は十分に知っていた。畏怖こそが支配の根源には必要であることも。こうしてハドリアヌスはダキア軍との決戦を決意する。
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