第2章

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ーーー ーーーーー ーー 「そうですか、熱ですか」 『まぁ看病はこっちがしてるから。お前が心配することはなんにもないよ、善』 次郎が倒れた日。 リオと約束をした日。 次郎の部屋の固定電話にかけたはずの電話になんで伊賀が出たのかはもはやおいといて。 『気にかける程度には次郎のことまだ好きなんだね』 「……クラスメイトなので」 今すぐ駆けていきたいという思いをぐっと抑える。俺の肩に頭を乗せて鼻歌を歌うリオ。 俺は何をやってるんだろうと頭が痛くなる。 こんなところで、次郎じゃないひとと寄り添って、 なんで今、俺は次郎の横にいけないんだろう。 電話越しに伊賀がフッと笑った気配がした。 『お前がいなかった時のこと、聞きに来なかったからお前の気持ちがわからなかったけど、 僕はなんだかんだまだお前のこと信じてるよ、善』 「…っ」 全てを見透かしたような声に思わず電話を切ってしまった。 どうせ伊賀にはわかってるんだろう、俺の気持ち。 それが悔しい。 「ジロー、熱?へーきなの?」 「…あぁ。」 「もー、ゼンたらそっけないよ。今日からオレたち恋人じゃん」 『オレだけを見つめるって約束してよ、ゼン そしたらオレはもうあの子になんもしないんだけどなぁ』 リオの言葉は呪文みたいだ 自意識過剰なのかもしれないけど、俺が離れた時次郎は傷ついたかもしれない リオの策略で要千穂を失った時、次郎は傷ついていた それに飽き足らず、次郎はいろんな人の冷たい視線に晒されて、制裁の疑いをかけられて傷ついたに違いない 脆かったものがさらに脆くなって、こうしてしまったことに責任を感じずにはいられなかった。 俺はなにもできなかった、 見てることしかできなかった 『じゃあ俺がリオのものになれば、リオはもうなにもしないんだね?』 『交渉成立、ほらゼン、オレを誰よりも愛してね』
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