第1章

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(引き続き善) 「…っはぁ」 何度も繰り返されていたキスは自然に止み、肩で息をする次郎の唇は唾液に濡れていて艶やかだった。 相変わらず煽ってくるなぁ次郎は。 それは無意識だとしても。 伏せられたまつげは髪同様、艶のある黒で、白い肌に色濃く影を落としている。 あぁ次郎だ、なんて今更思って頬が緩んだ。 ずっと近くで見たかった。 そして触れたかった。 この何ヶ月、どんなにもどかしかったか。 小さかった恋心は自分の意に反して大きくなっていくばかりだ。 「…次郎」 少しだけ染まっている頬を手のひらで包む。 ん、と小さく返事をしながらこちらを見上げた次郎の目は濡れて揺れていた。 「眠いの?」 「んー…、うん」 あぁほんとに次郎だ。 なにも変わってない。 ずっと欲しかったものだ。 「寝ていいよ」 「ん、寝る……」 ふぁ、と緩くあくびをした次郎は俺の肩に顎を乗せ、俺の膝を跨ぐように座ったまま何度かもぞもぞと動いた。 完全に動きが止まり、穏やかな寝息が聞こえてきて、 「次郎…っ」 やっと抱きしめることが出来た。 「ごめん、」 好きなんて言ってごめん 好きになってごめん 好きになっておいて、突き放してごめん でも、もうやめるから。 やっと覚悟が決まったから。 最後まで俺を受け入れてくれてありがとう。 白い頬にそっと唇を寄せた。 「好きだったよ、お前が」
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