第5章

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「もうやめて、」 絞り出した声に善ちゃんが首を傾ける。 そして「やめない、」と甘く囁いて俺の涙をぬぐった。 「ちがう、善ちゃんの言うみたいに、そんなに周りばっか考えてない、おれは、すっごい嫌な考え方だってたくさんした、」 「うん」 だめだ、だまれ、うるさい、 「せっかく、善ちゃんが帰ってきたのに、善ちゃんは変だし、リオさんとか、なんか怖いし、」 「うん」 「リオさんなんて傷つけばいいとか、最低なことばっか、」 ああもう、うるさいって、 「もう、わけわかんなくて、どうしたらいいかわかんなくて、ぜんぶ、おれがいないとこでやってほしい、」 「うん」 「つかれた、寝てたい、永眠したい、もーーー、」 ボロッボロなみだが溢れる、そう、もう疲れたんだ。なにもしたくないし、なにも思いたくないし、 ほっといてほしい、 そう思ってるはずなのにただうなずいて聞いてくれる善ちゃんに心があったまっていくようにも感じるし、ほっといてくれなかったバ会長にも嬉しさを感じたし、 自分に疲れた。本当に面倒くさい人間だ。 「ごめん、次郎」 「だから謝んないでよ」 「うん」 「もうさ、何がベストなのかわかんない」 うん、 「でも、善ちゃんが遠いのは、いやだ」 そうなの? 「もう冷たい善ちゃんはこりごりだよ」 そっか、 ぜんぶ、幼児みたいな発言をすべて、受け入れるように善ちゃんは相槌を打つ。 甘やかしてほしい、もっと甘やかしてほしい。 だって善ちゃんには甘やかされてきたんだもの。 「俺のこと甘やかしてね、善ちゃん」 やっと心に余裕が出てきて、力んでいた表情筋がふっと緩んで、少し口角が上がった。
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