知らない彼氏

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長い廊下の突き当たりが修一のクラスだ。 私のクラスでさえあんな感じだ…修一のクラス何て尚更静かで重苦しい空気なのだろう…。 そんな勝手な想像を膨らませ、私はそっと中を覗く。 (修一何処かなぁ…。) ニヤケる口元を抑えながら、ドアの隙間から彼を探す。 そんな私の視界に入ってきたのは…。 私の知らない人達に囲まれ、 笑顔で話をする彼の姿だった…。 私の理解出来ない問題を、 仲間と笑いながら話す彼…。 いかにも秀才的な表情で話す彼…。 そんな彼を、 私は知らない……。 私は声がかけられず、ドアをそっと閉めて出口へと向かった…。 何だか心細くなった…。 此処に、私の居場所などないのだ…。 唯一知っている彼さえも、知らない彼で…。 塾を出ると夜空が広がってて、私の気持ちを煽るように暗い…。 (私って…結構へたれだな。) 苦笑いを浮かべて、近くの壁にもたれかかる。 此処にいれば、彼が気づいてくれるはずだから。 しょうがない。 彼が此処に通って二年以上になる。 友達だって出来るし、頭のいい彼だから…頼りにされているのだろう…。 ただ…。 寂しかっただけ…。 彼の全てを知っていると思ってたから…。 彼の全ては、 私のモノだと思ってたから…。 《アンタ…自己中って言われない?》 先程、隣の悪魔に言った言葉を思い出す。 あぁ…自己中は私か。
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