知らない彼氏

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私の好きなショートケーキだった…。 「約束だったからね。」 「…………。」 「ミナリ?」 「修一は……。」 「何……?」 「バカだよね…。」 「………ミナリに言われたくない。」 そう言った彼は、顔をしかめた。 「修一は、頭はいいけど……私の事になるとバカになる。」 だって、こんな私に怒る事もなく…。 こんな私に、ショートケーキを笑顔で差し出すのだから…。 暫くの沈黙の後、修一は言った…。 「バカ同士お似合いだね。」 「………へっ!?」 修一が珍しく自分をバカ何て言うから、驚いてしまった。 そんな私を、彼は笑う…。 「アッ……。」 「何?」 「ううん…。」 再び俯いたのは…。 私の顔が熱を帯びたがら。 その笑顔は、 私の知ってる彼だった。 私しか知らない彼だった…。 「ケーキいらないの?」 「いる!!」 慌ててケーキを受け取る私を、彼は優しい目で見ていて…。 何だか…無性に彼が愛しく思えた…。 その瞳の理由が、私と同じ理由だと願いたい…。 帰って行く彼の後ろ姿を見つめながら、私はそんな事を考えていた…。 (彼にはかなわない…。)
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