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塾の近くにあるファミレスで、俺は頬杖をついて外を眺めた。
目の前では、可愛らしい女が可愛らしい仕草でケーキを食べている。
何かを話しているが、俺の頭には入っていない。
それでも、適当に相槌をうてば彼女は嬉しそうに笑う。
そんな俺達を、周りは恋人同士だと思っているだろう…。
実際は違う。
只の友達……少なくとも、俺はそう思ってる。
彼女は多分そうは思っていないだろうけど…。
そんな事を考えたら、何だか滑稽に思えてきて俺はクスリと笑った。
「涼太?」
「うん?」
「何か面白い物でもあったの?」
彼女が同じように外を眺めた。
「何も…それより、さっきの続き聞かせろよ?」
「うん!!」
頭を軽く撫でてやると、彼女は嬉しそうに頷いて話を再開した。
俺は、また聞いているふりをする…。
(そう言えば…彼奴には撫でさせてもらえなかったな…。)
そんな事を考えて、俺はハッとする。
(どうして、彼奴が出てくるんだよ…。)
彼奴とは、同じ塾で隣に座る《佐伯 ミナリ》の事。
そして、ある疑問に辿り着く。
(どうして…俺はあんな事言ったんだ?)
最近の俺は、その事ばかり考えている気がする…。
ミナリが珍しく落ち込んでいて…それを、あんな手紙で励ました俺…あの日からだ…。
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