0人が本棚に入れています
本棚に追加
初めて塾でミナリを見た時、挙動不審な彼奴を少しからかってやろうと思った。
塾に初めて通う事になった俺は、何か楽しみが欲しかったんだ…。
それから、ミナリとよく話すようになった。
彼奴はからかうと、すぐに本気で怒る。
それでも興味のある話になると、俺に笑顔で話をしてくれる。
自分で言うのも何だが、俺は普通よりは良い男だ…。
だから、女にはチヤホヤされるし女の笑顔にもなれている。
けど、ミナリの笑顔はそんな女達とは何処か違って見えた…。
俺が冗談を言ったりすると、大抵の奴は笑顔で返してくる。
でも、ミナリは俺に本気で向かってくるんだ…。
そんな彼奴と会うのが、俺は何時しか楽しみになっていた…。
それが数日前、らしくなく落ち込んでいて…。
俺の冗談も冴えない返事で返された…。
正直、俺は面白くなかった。
彼奴には、そんな顔は似合わないと思った。
だから、聞いたんだ…。
《恋煩いか…?》
驚いた彼奴を見て、一瞬胸がざわついた。
そして、胸が締め付けられた…。
《彼氏の事何だけど…。》
《お前、彼氏居たんだ…。》
これは俺の本音…。
だけど、彼奴はそんな事に気づきもせずに何度目かの溜め息をつく…。
無性に腹が立った…。
授業が始まっても、彼奴は真っ暗な空を眺めては溜め息をついていた…。
そんな姿を見ていたら、俺まで落ち込んできて…。
最初のコメントを投稿しよう!