隣の彼女~涼太の思い~

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本当は、笑えない…。 本当は、酷く胸が苦しい…。 本当は、嘘ならいいと思った…。 本当は、知らないふりをしていた…。 けれど、気づいてしまった…。 何故、彼奴の笑顔を望むのか。 何故、彼奴の落ち込む姿を嫌うのか。 何故、彼奴の彼氏に腹が立つのか。 何故、彼奴の事を苦しいくらい思うのか…。 俺は、彼奴が好きなんだ…。 彼奴に彼氏が居る事を知っても、俺はそれでも彼奴が好きなんだ…。 何時の間にか、俺は彼奴に恋をしていたんだ…。 「ださっ…もう失恋かよ。」 「へっ?」 「いや、何でもない。」 時計を見れば、塾へ向かう時間になっていた…。 俺は、あの日の彼奴と同じ様に溜め息をついて空を見上げる…。 薄暗くなった空に、小さく光る星が見えた。 あの星に手が届かないように、俺の気持ちが届く事はない…。 でも、必死に手をのばしていれば…何時かは星に届くだろうか…? 別に彼奴の不幸を望むわけじゃない。 けれど、一度知ってしまったこの思いを捨てる事も出来ない。 諦める必要があるのだろうか…? 誰かが言ってた…。 《人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んでしまえ…。》 それなら、蹴られて死んでしまおう。 この思いを簡単に捨ててしまうくらいなら…。 中途半端に人を好きになるくらいなら…。 蹴られるまで、彼奴の笑顔に溺れていよう…。 そうしないと、苦しさで泣いてしまうから…。 そして俺は、心から笑った。 彼奴の笑顔を思いながら…。 (俺も悪趣味だよな…彼奴を好きになるなんて。) (今度は笑ってる…涼太、大丈夫かな;)
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