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「待てよミナリ!!」
「!!」
会場から大分離れた公園で、俺はミナリの腕をつかんだ。
こいつ足速いな…。
何てお門違いな事を考えていると、彼女が浴衣で顔を拭った。
「おいっ…浴衣が汚れるだろぅが。」
そう言って、タオルを差し出した。
しかし、彼女はそれを受けとらず俺を見上げた。
「ミナリ…。」
その顔は涙で濡れ、目は真っ赤になっていた。
「花火なんて嫌い…。」
「………。」
それは、彼氏を嫌いになれない自分を隠しているようだった。
俺は…意地っ張りで強がりな彼女を抱き締めた。
「ちょっ!!荒井…離してよ!!」
「やだ…。」
俺の腕で暴れる彼女を、逃がさないように力を込めた。
「言っただろ?自分に嘘つくなって。」
「………。」
大人しくなった彼女は、再び子供のように泣き出した。
俺はズルい…。
傷ついた心につけ込むように、優しく彼女を抱きしめるのだから…。
それでも、彼女が少しでも安心して泣けるなら…。
彼女が1人で泣かないで済むのなら…。
俺は、最低だと言われてもいい…。
俺達だけの公園で…聞こえてくるのは、遠くで上がる花火の音と彼女の泣き声だけ…。
出来るだけ優しく、彼女の髪を撫でた…。
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