夏祭り ※涼太編※

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腹が立った…。 彼女を此処まで泣かす彼奴に…。 彼女の心を救えない自分に…。 俺なら、絶対に泣かしたりしない。 他の女と手を繋いで空を見上げたりしない。 俺が、コイツの彼氏なら…。 叶わない思いに、俺は胸が苦しくなった。 今だ泣き続ける彼女を抱きしめて、その思いが届けばいいと願った。 やっぱり、俺はズルい…。 誰か…。 彼女の涙を止める術を教えてくれよ…? 「ミナリ…。」 「ヒクッ…ヒクッ…。」 「そのリンゴ飴かせ…。」 「……?」 彼女は俺から離れると、割れたリンゴ飴を見つめた。 そして、少し考えた後躊躇いがちにリンゴ飴を差し出した。 「………。」 「……荒井?」 俺はリンゴ飴を受け取ると、袋から取り出しそれを食べた。 「ナッ!!な、何してるの!?」 「はぁ?見ればわかんだろ?食ってんだよ…。」 「それ落ちたやつだよ!?」 「袋に入ってたんだから関係ねぇよ…お前も食えよ。」 彼女にリンゴ飴を差し出すが、食べずに驚いた表情で俺を見つめた。 「だって…それは修一と…。」 「だから食うんだよ!!」 「……?」 「こんなの何時までも持ってたら、お前が泣きやまねぇだろうが!!」
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