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崩れてしまった帯を背に、彼女は暫く空を見上げて口を閉ざしていた。
何時しか花火は終わっていて、俺は小さくため息をつく。
「あっ…ダチに連絡してねぇ。」
「えっ…今頃、探してるんじゃない?」
「だよなぁ…メールでもしとくか。」
俺は携帯を開いた。
「うわっ!!着信すげぇ事になってる…。」
「ごめん…。」
突然謝った彼女に笑うと、俺はダチにメールを送信する。
「別にお前のせいじゃねぇよ…気にすんなよな。」
照れ臭くて、髪をぐしゃぐしゃに撫でてやった。
「プッ…すげぇ髪型になった。」
「もう!!どうしてくれんのよ!!」
膨れ面で髪を整える彼女を見て、意地悪な笑みを浮かべる。
「顔もひでぇしな!!」
タオルで涙の後を拭ってやると、またも膨れ面で顔を背けた。
そうして、少しでも気がまぐれてくれればいい…。
「荒井最低!!完璧にメイク取れたし!!」
「はぁ?バーカ…既に取れてたんだよ!!」
「えっ!?うそっ!?」
「マヂマヂ。」
その時だった…。
彼女の携帯が鳴り響き、それをみて顔色が変わった。
「………修一からだ。」
「…………。」
「…………。」
鳴り続ける携帯を見ながら、彼女は音が止むのを待っていた。
「出ないのか…?」
「出れないよ…。」
「そっか…いいんじゃねぇの?今は、無理に話さなくても。」
「………うん。」
本当は、出て欲しくなかった。
せっかく泣き止んだ彼女を、泣かせたくなかったから…。
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