─三年前─ 名も無き草原のどこかで。

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さて、賢十が僕に見せてくれたのは自分のステータス画面だ。 先ほど僕が見たものと同じ表記の下、『スキル一覧』の内容が見えるようになっている。三個のスキル名と、ご丁寧にその詳細が記載されている。しかも、ウィンドウの一番下に大きな下向きの矢印マーク。まさか、下にスクロールするのか。 右端にこのページの何割が出ているかを表すスクロールバーがあるが、この画面だけで三分の一ほど。現時点、単純計算で賢十は約十個のスキルを保有していることになる。 そのスキル達の一番上に、《クーデュベトン=フラム》という名前があった。これが先ほど、賢十が使ったスキルだろう。 詳細はこう。 『斬撃系炎属性スキル。炎を纏った斬撃を放つ』 とてもシンプルだ。しかし、確かにこれ以上説明のしようが無いのも分からなくもないような。 その下のスキルも似たような名前だが、少し効果が違うようだ。 「へぇー……。ていうか、賢十。こんなのあるなら最初から使ってよ」 避難の目を向ける僕に、賢十が頭を掻いて苦笑いする。 「いやぁー、あはは……。実はね、スキル出したのアレが初めてなんだ」 「……は?」 「ステータス画面見て、あるのは知ってたんだけど、どうやって出すんだろうなぁ、って思ったまま放置してて」 あっはっは、と頭を掻きながら、賢十は笑う。 「え……? という事は賢十、確信も無いのにあの場面でそれ使ったの?」 「うん。多分、出なかったら三人共あの熊に殺されてたね」 「ゾッとしないこと言わないでよ……」 それならスキルを放つ際に「お願い……出て」なんてどこの誰にしてるかも分からない懇願もするわけだ。ぶっつけ本番で出るかどうかも分からない物に自分の命を預けたのだから。 賢十。なかなかギャンブラーな男である。 「まぁまぁ、過ぎたことだし。結果的に助かったんだから良いじゃない」 「あのね……」 思わず頭を抱えた僕に、賢十は首を傾げて聞く。 「……ところで、問の保有スキルって何?」 「……え?」 予想外の問い掛けに、僕はあっけに取られる。 「どうしたの? 見せるのやだ? 別にそれなら良いけど……」 「い、いや、そういうわけじゃないんだけど……」
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