道中、盗賊注意

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まぁ、ここまでのメンバー紹介を一度に覚える必要は無い。 後々、再度紹介することになるだろう。 ……いや、そういえば、もう一人チームメンバー紹介するのを忘れていた。 僕、桐原 問(きりはら とい)だ。 半年前、どういう経緯か、このチーム『フラグメント』のリーダーとなってしまった僕は、現在この五人と一緒に旅をしている。 それにしても何故、僕がリーダーなのだろう。なんて言ったって僕は、『フラグメント』のチームメンバーの中でも、一番要らない子なのだ。 特にこれといった特技も無し、スキルもゼロ。戦闘では全く役に立たず、いつも皆に助けられ、守られてばかり。 僕が戦闘で全く役に立たない理由に、スキルが無いことを挙げてしまうのは甘えと言われるだろうか、なんて内心で自嘲の笑みを浮かべてみる。 スキルとは僕達がこの世界に飛ばされた時、初めから持っている力の事だ。 この世界においてスキルは『チーム登録』程ではないにしろ、かなり重要な部分を占めている。 何故ならこの世界における戦闘。それが、スキルの撃ち合いと言ってもいいものだからだ。 如何に自分達の持つ手札を上手く扱うか、如何に戦略に絡めて戦うか、それが全てと言ってもいい。 このシステムのおかげで現実での剣の腕が覚束なくてもこの世界の人達はモンスターなどと戦えるわけだが、これが僕にはマイナスに働いて仕方が無い。 何しろ僕はスキルを持っていないのだから、剣を持っていようが鎧を装備していようが丸腰のようなものなのだ。 次に、この世界における生産。スキルが無くとも苗を植えたり種を植えたりする事はできる。しかし、スキル「農夫」や「ファーマー」を持つ人間よりも良い作物を作れるかというと難しい。 前の世界で農耕技術を持っていようとも、スキルを持つ者には敵わない。 僕だって聞いた時は理不尽過ぎると思ったが、つまりそれだけこの世界におけるスキルの重要性は高いのだ。 また、剣や盾はスキル「鍛治職人」を持っていないとほとんど作れないと言ってもいい。 理由は簡単、前の世界で鍛治技術に精通していた人間なんて、そうそういないからである。 作れたとしても、やはりこの世界の純度の低い金属をちゃんとした金属まで精錬して剣を作り出すとなると、スキルが無いと不可能に近いのだが。
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