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そんな訳で大事な大事なスキルだが、この三年の時点でほとんど確定と言っても良いくらいに決まっていることが確認されている、とある事実がある。
それは「スキルはこの世界に飛ばされた時点で確定しており、後から習得する事はできない」というもの。
つまりだ。僕は既に詰んでいる。
幼き中学二年生の僕が抱いた希望は、儚くも打ち砕かれたに近い状態なのである。
新しくスキルを習得する事はできない。その事実を知った時の僕の絶望たるや。
燐姉さん曰く、見ていられないくらい可哀想なことになっていたらしい。
それでも一縷の望みを胸に秘め、諦めずに今まで来たが未だに保有スキルはゼロ。
そのせいか、良い意味でもなく悪い意味でもなく僕は地元では有名だ。
通り名まで付いた。その名も『持たざる者』。付けた奴は完全に馬鹿にしているに違いない。
先程のトレントとの戦闘も戒斗の《プロテクション》があったから何とか木の鞭を盾で弾けたが、無かったら今頃僕の左腕は盾ごと目も当てられない状態になって、四葉の回復魔法で再生させる羽目になっていただろう。
戦闘後の戒斗の不機嫌と、帰還後の燐姉さんの殺人拳骨二発目はそれが理由だ。
何故なら、僕はチームメンバーのみんなに戦闘を禁じられているのである。当然ながら、理由は「弱すぎるから」。本当に情けなさすぎて笑えてくる。
一体、何がリーダーだろうか。
そんな不甲斐ない僕だが、『フラグメント』のみんなにはとても大切にして貰っているのは分かる。
燐姉さんは実の弟のように可愛がってくれるし、指揮官の弥生さんも一応僕の方針に従ってくれる。
戒斗とは会ってから日が浅いながら親友と言っても良い仲であり、四葉もなんだか慕ってくれる。
文典さんも、スキルが使えない僕の為に色々と試行錯誤しながら身を守れる武器を作ってくれる。
本当に僕には勿体無い人達だ。
正直な所、何故可愛がってくれるのかはよく知らない。聞いたことがそもそも無いのだ、気恥ずかしくて。
まぁ、色々と考えてしまうこともあるが、なんだかんだこの旅は楽しい。
危険もあるが、『フラグメント』のみんなと一緒に過ごせることは、僕がこの世界に来てから一番楽しいひと時かもしれない。
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