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爽快に言い放つ戒斗に、僕は話題を変えるべく聞く。
「……で? まさか、そんなこと話すためだけにここに来たわけじゃないよな」
「おうよ」
戒斗は腰の剣を抜き、肩に担ぐ。
「ま、たまにはスキル無しで剣だけの戦闘訓練も良いんじゃねぇかな、と思ってさ」
口角を吊り上げて挑発的に言い放つ戒斗に、僕は似たような笑いを返す。
剣を抜き、スナップを利かせて一回跳ね上げる。それと同時に『「ブロードソード」を装備しますか?』というウィンドウが現れた。『はい』。
その瞬間、剣の重量感が嘘のように掻き消える。
「《プロテクション》」
戒斗の声と同時に僕と戒斗の体を光の膜が包む。これで、スキル無しの攻撃ならば例えクリーンヒットしようとも薄皮一枚切れるくらいで済む。
模擬戦の基本は寸止めだが、念のためだ。
「制限時間は《プロテクション》が切れるまで。んじゃ……」
剣を構えた戒斗が地面を踏み蹴った。
「行くぜっ!」
「っ……」
そう言って戒斗が放ったのは水平切り。剣で流しながら躱し、左拳を腹に叩き込む。
効きはしない。相手はプレートアーマーを着ているのだから。
「ぅ、らぁっ!」
僕が躱した剣をそのまま引き戻し、戒斗は再び斬りかかる。
「んっ……」
今度は正面から受け止める。火花が散り、戒斗の剣が止まる。
鍔迫り合い。には持ち込まない。戒斗の剣を軌道に沿って逃し、僕は間合いから退避する。
全身を右回り回転。剣を突き出す。
「ふっ……!」
僕の剣は戒斗の首筋手前で止まる。
「……一本だね」
「ちっ……」
舌打ちをして戒斗が僕から距離を取る。
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