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「《マジックバレッド【炎-フレイム-】》」
突如、女性の声と共に森の中から二つの炎の弾丸が渦を巻きながら飛んできた。
恐らく敵の遠隔攻撃魔法だ。
「四葉!」
「はい! 《サンクチュアリ》!」
しかし、炎の弾丸は四葉を中心に展開した円柱状の聖域に阻まれてかき消える。
《サンクチュアリ》は、自らを起点とした半径約二メートルに円柱状の聖域を出現させ、敵の魔法を相殺することができる防御魔法だ。
耐久性については文典さんの『デュラブル』の性能を下回るものの、複数の攻撃を同時に遮断でき、仲間を守ることができるのは大きい。
「《ホーリーレイ》!」
カウンターの要領で四葉が炎の弾丸が飛んできた方向へ光のレーザーを放つ。
「ぐぇっ!?」
直撃したらしい。《ホーリー・レイ》は距離に従って威力が落ちるらしいが、敵は意外と近くにいたようだ。気は失わないまでも、しばらく動けないだろう。
僕に斬りかかってきた盗賊の攻撃を受け止め、四葉が《ホーリーレイ》で吹き飛ばす。
そうして、ひと段落ついたところで他のメンバーを見ると、僕達の荷物が積んである馬車の周りには、かなりの人数の盗賊が倒れていた。
伏兵がやはり居たようで、当初僕の数えた二十三人より数人多い。
「弥生、こっちは終わったわよ」
「こっちも、もういないっぽいね」
燐姉さんと文典さんが周囲を確認して司令塔の弥生さんに報告している。
「後方も、もういないかな」
僕と四葉も周囲を確認して、同じく問題無いと伝える。
「分かった。じゃあ、戒斗が道を確保するまで引き続き警戒をお願い」
弥生さんの言葉にそれぞれが応答し、周囲の警戒に戻る。
そんな中、戒斗は馬車の進行に邪魔な、倒れている盗賊をえっちらおっちら道の脇に片付けていく。
ついでに弥生さんが《ベクター》を使って馬車に積んであった拘束用の縄で器用に盗賊達の足を繋いでいく。
本来は物体浮遊魔法であって、こちらの使い方の方が正しいらしい。
使いこんだ結果、出力が上がって戦闘に使えるまでの物になってしまったというのはここだけの話だ。
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