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そして、両足を左右の人間と繋がれてしまった盗賊達。
動けなくはないまでも、移動するには二人三脚を遥かに超えるコンビネーションが必要だろう。すぐには追ってこれないように足止めである。
この辺りには特に強いモンスターは出ないとの事なので命の危険も少ない。丁度良い拘束方法だ。
縄なんて剣や斧で切ればいいじゃないかと思うかもしれないが、非常に残念な事にこの縄も我がチームの職人、奏多 文典さん製だ。
文典さんの《付与術師》という生産系スキルで、作る際に耐久力強化のエンチャントをかけられまくっている特殊な縄で、生半可な刃物ではそう簡単に切れない。
確かに、約三十人での二人三脚の練習をするよりかは切った方が幾らか早いだろうが、それでも外すのに半日はかかる。
「弥生、こんなもんでいいか?」
「そうだね。もう通れるかな」
邪魔な盗賊達を退かし終わった戒斗が確認を求め、最後の一人の足を縄で縛ったところで弥生さんが頷く。
それに伴い、僕達はそれぞれの担当場所から馬の近くに戻った。
「皆さん、どこも怪我はしてませんか?」
四葉が心配そうに首を傾げて前線にいた三人に聞く。
「なんともないぜ」
「あたしも。そんな強い相手じゃなかったし」
「俺も特には無いかなー」
前線で戦っていた戒斗、燐姉さん、文典さんが首を振る。僕は四葉と共に戦っていたので、確認の内にはノーカウント。
弥生さんに至っては近くにいた戒斗が守っていたので武器、当人共に無傷だ。少し疲れた顔をしているが。
四葉も半分安心、半分疲れたように溜息を吐く。
仕方の無いことだ。魔法職はただでさえスキルの使用量が多い。
特に中央で司令塔として動いている弥生さんはさりげなく戒斗だけでなく燐姉さんや文典さんのフォローも行っている。それがただでさえ控えめなスタミナの消費に追い打ちをかけているのだ。
「弥生さん、この近くで休める場所はある?」
「ああ。少し行った先に、見渡しの良い丘があるよ」
「じゃあ、今日はもうそこでテントを張ろう。別に急ぎでもないし、このままもう一度襲われるのは流石に危なさそうだし」
「……そうだね。まだ日は高いけど、無理に進むことも無いか」
弥生さんが頷く。
下手なコンディションで無理をすると酷い目に遭う。この三年で僕達『転生者』が身に染みて学んだ事だ。
そんな訳で特に反対も無く、僕達はすぐ近くの丘で休むことになった。
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