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周りを森と草原に囲まれた小高い丘の頂上付近で野営の設置を終えた後、僕達は狩りの為にそれぞれ周辺に散った。
僕達の食事は基本的に現地調達である。
一応、日持ちの良い保存食を幾らか馬車に積んでいるのだが、数が限られている上に正直不味い。
『転生者』は全員、元の世界の缶詰という代物が如何に偉大な発明だったかを現在進行形で実感している所だ。
そんなわけで僕達は普段、適当な場所に生えている野草や果実から食べられる物を選別したり、川で魚を釣ったり、モンスターを狩ったりして意地でも食糧を区面するのだ。
毒のある食材などは、スキル《料理人》を持っている文典さんが判別してくれるので問題無い。
本当に文典さん様々である。
さて、僕はいつも食糧調達時に組んでいる戒斗、それと珍しくこちらに着いてきた弥生さんと共に森の中を探索して回っていた。
「弥生さん、テントで休んでなくても良かったの?」
僕と戒斗より若干遅れて着いてくる弥生さんに、僕はそう声をかける。
「ああ。この辺りは危険が多そうだからね。モンスターはともかくとして、人間が」
「心配しなくても大丈夫だっての。オレがいる限り、例え負け組が十人居ようが二十人居ようが問は絶対守りきる」
先程のような盗賊に襲われることを危惧する弥生さん。
普段は基本的に二人一組で、二組が探索、一組が拠点の防衛に勤めるのだが、安全重視の方針に従い、今日は一組三人で行動している。
もう片方の三人はキャンプ地の防衛だ。
そんな弥生さんに、戒斗が自信満々で言い放つ。
「というわけで、弥生は戻って休んでろ」
「戒斗、あのね……」
ビシッと指差して言い放つ戒斗に、弥生さんは呆れた風に肩を竦める。
そんな弥生さんなんて気にも留めずに、戒斗は先に進んでいく。
呆れと心配が混じったような顔でその背中を見つめる弥生さんに僕は小さく伝える。
「……分かりにくいけど、戒斗は弥生さんのこと心配してるだけだから」
「それはウチも一緒だよ。……戒斗は色々と危なっかしいから」
「まぁ、それも分かるけどね」
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