魔剣の山

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 戒斗は時折、そのタンカーとしての役割の所為か仲間を守る為には自分の命を顧みない節がある。 騎士としてはその精神は正しいのかもしれないが、友人の僕としてはもう少し自分を大事にして欲しい所だ。 「おい、お前ら何コソコソ話してんだよ。置いてくぞー」 「ああ、ごめん」  怪訝そうに振り向いた戒斗が僕に言った。僕は慌てて駆け寄りながら謝る。 「弥生はさっさと帰れっての……」 「悪いけど、リーダーに反対されない限りは戻る気は無いかな」  不敵な笑みを浮かべてそう返す弥生さんに戒斗は小さく舌打ちをしたが、それ以上は何も言わなかった。  二時間ほど探索を続けていると、ナシやブドウなどの木の実が生った木が見つかったので、幾つか貰っていく。 地面を注意深く見れば、野生の山菜が群生していたりするので、こちらも採取。 「《コメット・スナイプ》」  飛び跳ねていた一角ウサギのモンスター『ユニコーンラビット』へ向けられた弥生さん杖から、ホーミング式遠距離狙撃魔法が発射される。 手持ち花火のような青色の炎を噴射しながら進んだ直径一センチ程の小さな球体はウサギの小さな頭に穴を穿ち、苦しむ暇さえ与えずに一瞬でその命を刈り取った。 三十センチほどの『ユニコーンラビット』の亡骸を両手で拾い上げた弥生さんが聞いてくる。 「このくらいかな?」  僕は頷く。 「そうだね。今日の夕食と明日の朝食くらいは間に合うと思う」 「うし、んじゃ、帰……」  そう、戒斗が言いかけた時だった。  突如、強烈な突風が僕達を襲った。 「うわっ!?」  あまりの強風に堪らずひっくり返った僕が見たのは、空を横切る黒い影。 大きな翼を広げたその影は、僕達が進んできた方向を横切るように飛び去っていく。 鱗に包まれた体と鋭い鉤爪、爬虫類を思わせる頭を見た僕は呟く。 「……『ドラゴン』?」 「……いや、違う。多分、『ワイバーン』だ」 僕の呟きを、戒斗が訂正する。 「……違いは?」 「『ドラゴン』はもうちょっと、体が長くてでかくてトカゲっぽい。今のはどっちかっつうと鳥に近い姿だった。爬虫類っぽいのは変わんねぇけどな」 「へぇ……」  本物の『ドラゴン』を見たことがない僕にはなんとも言えない話だ。 弥生さんの方を向くと、彼女も判断に困った顔をしている。
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