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夕食も終わり、太陽が完全に西の空に沈んだ夜の時間帯。焚火が焚いてある炎の近くで文典さんが僕達の武器を傍に置いて、今日行った盗賊との戦闘で付いた傷の修繕を行っていた。
胡座をかいて、剣や杖を丹念にチェックしていく文典さん。
傍らには、普段は馬車の中に収納されている鍛治用ハンマーや砥石などの器具が入った革製の鞄が置いてある。当然ながら、この鞄も文典さん製だ。
「どんな感じ?」
傍でそれを見ていた僕が聞く。文典さんは別に作業中に話しかけたからと言って集中を切らすようなタイプではない。
一から杖や武器を作る時はともかく、点検の時に話しかけるくらいなら怒ることはない。そもそも性格からして職人堅気とは程遠い所にいる人だ。
「心配しなくても問の剣はそこまで痛んでないかなー。戒斗と燐さんのがやっぱり酷い」
そう言って文典さんはパッシブスキル《鍛治職人》によって研ぎ澄まされた目を使い、僕にはとても見えないような傷を確認していく。
スキルには、大きく分けて二つの種類がある。一つは「アクティブスキル」と呼ばれる物。これはスキル名の発声によって発動するスキル全般をこう呼ぶ。戒斗の《プロテクション》や燐姉さんの《マジックソード》などがこれにあたる。
対するもう一つは、パッシブスキルと呼ばれる物。こちらは、スキル名の発声が必要無い。持っている限り常時発動しており、アクティブスキル発動時に見られる極端な疲労は見られない。こちらは主に《鍛治職人》や《木工職人》、《料理人》などの生産系スキルに多い。
また、固有の名称が多々存在するアクティブスキルに対し、パッシブスキルは結構名前の被りが多い。《鍛治職人》はそんなには多くないまでも、旅に出る前に僕達が拠点にしていたコミュニティでは探せば見つかる、というくらいには所有者がいたスキルである。他も大体はそんな感じだ。
「じゃ、まずは問の剣からやっちゃおうか」
文典さんは僕の剣を手に取り、砥石に水をかけて研いでいく。
ちなみに、今このチームで起きているのは僕と文典さんだけだ。他のメンバーは既にテントに入って眠りに着いている。
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