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テントも見た目は普通のテントなのだが、中で男女別に分かれているという親切設計。しかも、お互いの領域には例外を除いて入れない。
さらに容量拡張のエンチャントのおかげで中は見た目からは想像できないくらいに広い。
正確に言うなら外から見た姿は明らかに六人も入ったらぎゅうぎゅう詰めで寝れやしないだろうとしか思えないが、実際はそれぞれワンルームの部屋くらいの広さがある。
空間を捻じ曲げているとしか思えない所業だ。
耐久性強化、頑丈性強化のエンチャントがかかっており、きちんと設置すれば竜巻に襲われてもビクともしない、熊が突進してこようと跳ね返す。
ついでにしっかり虫よけのエンチャントもかかっている、とギミック満載のふざけた組み立て式テントとなっている。
既に察していると思うが文典さん製である。
ファンタジーの力を手に入れた職人というものは、前の世界の常識では考えられないような物を作るのだ。
本人曰く、ここまでの物を作るのにも色々と苦労があったらしいが。
最早、普通の家なんて遥かに超える耐久性を誇るテントではあるが、野営をして安眠するには少し足りない。
容量拡張の限界の問題で馬と荷物は外に繋いでおくしかなく、そのせいで見張りが必要だ。
そう。僕達が外に出ているのは、その最初の見張り番が僕と文典さんだからなのである。
文典さんは、そのついでに昼間摩耗した武器を修繕しようと考えているのだ。
「はい、問」
「ありがとう、文典さん」
僕の剣を研ぎ終わった文典さんは、鞘に戻して僕に返す。
この剣を一番最初に研いだのは、一番簡単ということもあったのだろうが、僕が見張りだから優先してくれたのだろう。
確かに文典さんの手が塞がっている間、僕が周りを警戒していなければならない。
次いで、文典さんは燐姉さんの持つ一対の剣を手に取った。
これまで使っていた砥石を置き、バッグから筆と青色の液体の入った瓶を取り出すと、瓶の蓋を開けて筆でその中身を剣へ塗っていく。
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