孤高の嘆息、偏執の寵愛

8/38
前へ
/38ページ
次へ
  「ふんぎりがつかない? ……拓海さんが?」 ぱちぱち……とまばたきをして、 彼の顔を見つめ返す。 彼は鬱陶しそうに 眉の間に皺を作ると、 あたしの目から まだはらはら落ちる涙を、 シャツの袖で拭いてきた。 「つくわけねえだろ。 カズヤが来た頃はお前まだ、 高校入ったとこだったし」 「え? ガキって、あたしのことなの!?」 「ったりめーだろ。 ガキの頃は1年だって でけえのに、 3年も遅く生まれやがって」 「……」 示し合わせたとも思えないのに、 誠司と逆のことを言う。 ポカンとしていると、 拓海さんはチッと舌打ちをして、 涙を完全に拭ってくれてから あたしを助手席のシートに グイと押し戻した。 .
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1512人が本棚に入れています
本棚に追加