孤高の嘆息、偏執の寵愛

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  「……待ってたの?」 「……」 「ずっと……?」 拓海さんは、 綺麗に施された ネイルを噛みかけて── やめる。 「……それだけじゃねえよ。 お前が大人になるの、 じっと待ってた」 ああ、くそ。 忌々しげにつぶやいて、 拓海さんはあたしのシートベルトを ジャッと引く。 自分のもそうしてから、 エンジンをかけて一気に車を出した。 拭ってもらったはずなのに、 あたしの視界はまた一気に 潤んで歪んで。 こどもみたいに、 拓海さんの隣で 泣き出すしかできなかった。 .
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