歩むべき道

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見慣れない二人の男と、角と翼のある巨大な黒い犬、真紅の鎧兜を纏った…アベル? 突然私の指にはめられたベリアルの黒い指輪がバリンと弾け飛んだ。 目の前の異様な光景に驚き、呆然とする。 「初めましてお嬢さん。私、マルコシアス侯爵と申します。」 黒い巻き毛の派手な服装の男が帽子を脱ぎお辞儀した。 その後ろからいかにも天使です!って人が私に歩み寄って来た。 私の前にしゃがみ込むと、スッと光を纏った手を差し出し私の頭上にかざした。 その光のじんわりとした温かさに安心して目を閉じた。 マルコシアスの声がする。 「彼は主天使、ザドキエル君だよ。君を助ける為に駆けつけてくれたのさ。私が呼んだんだけどね。」 目を開けてマルコシアスを見て吹き出す。 いつの間にかカインがいる。 カインは壁にもたれ腕組みをして私を見下ろしている。 「ベリアルなら、私達が地獄に沈めておいたから安心したま…」 言いかけたマルコシアスを三人が睨む。 マルコシアスはパッと両手を上げて降参のポーズを取る。 「では、私はこれにて。お嬢さん、またいつか会いましょう」 と言って小さく手を振ると歪んだ空間の中に消えていった。 良くしゃべる人。 でも面白い人だなぁ。 私の目の前の天使のザドキエルは私を無言で見つめる。 彫りの深い白人男性で、とても真面目で賢そうな顔立ちの天使。 「そこの砕けた指輪はベリアルからの贈り物ですか?」 うんと頷く。 「ならばベリアルとの主従契約は終わっています。」 ザドキエルはジッと私の目を見つめる。 「貴女が人間としての死を受け入れるなら私がこのまま天へとお連れします。」 そう言うと私の手を優しく握る。 驚いた私はカインの顔を見る。 でもその目を反らすカイン。 「貴女が決めなさい!」 ザドキエルが厳しい口調で言った。 「う、受け入れないと…私はどうなるんですか?」 ザドキエルは信じられないと言った表情で私の手を離す。 「貴女はこの悪魔のせいで死に至ったのですよ、自ら命を絶つ行為は許せませんが、神には私からお話しましょう。」 眩しすぎるザドキエルから目をそらし、下を向いたまま首を振った。 「このまま腐った魂で地上に留まりたいのですか?」 ザドキエルは唖然として私を見つめる。
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