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約束の本屋には、予定の時間より15分程早く着いたのだが、彼女は音楽雑誌を見ながら、僕を既に待っていた。
1つ下の彼女はいつもの様に、派手な格好をしている。
赤と黒のタータンチェックの超ミニスカート、所々破れた黒のフィシュネットストッキング。 上はPistolsのTーシャツと沢山の安全ピンとボタンピンを付けたジャケット。 髪はショートのボブで、スプレィでパァフと立てていて、しかも青とオレンジのメッシュ。 白い顔には、分厚い黒のアイシャドウと赤いルージュ。 高いヒールの付いたブーツを履いていたが、背は僕の肩より低くく、そして少し痩せ気味。
その彼女が、
「もぅ、遅いっちゃ!」となぜか怒った様にブツブツ言っている。
「何が、5時半やろ」
「また UK かジャズ喫茶で時間潰してたっちゃろ。 たまには私よりも早く来たらよかとに。」と口を尖らせながら言う彼女。
「お前が来るの、めちゃ早いだけやろ」
「お前って呼ばんで! 結婚してる夫婦みたいやなかとね」
「君が」
「硬すぎっるちゃ。 名前で呼んで!」と言うと、僕を置いて歩き出してしまった。
「何や、PMSか?」と聞いたが、返事は無い。
彼女に追い付き、
「どないしてん?」と聞いて、腕を彼女の肩にかけて、彼女の顔を覗き込むと、
彼女は目を少しウルウルさせながら、
「もうこれ以上、家にいたくないっちゃ」と小さな声でつぶやく。
「そうか」と言って、彼女の肩を少し抱きしめる。
震えが止まらない彼女を、もう一度強く抱きしめると、”ふぅー” と息をもらす。
ゆっくりと身体から力が抜けていく彼女に
「ちょと座ろうか」と言い、地下道から地上につながる階段に二人で座りこんだ。
「どないした、お前、気ィ強いくせに?」
「お前って呼ばんで!」
「まぁ、落ち着けや。 どないしてん、アミ?」と聞いたが、返事はない。
「まぁえーわ、話したくなったら、いつでも聞くわ」と言って、煙草に火を点け、彼女の肩に腕をまわすと、彼女は僕の胸に頭を押し付けて、
「この暖かさだけが、、、欲しい時があるっちゃよ」と淋しそうにつぶやいた。
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