第一章

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    ―『兄』を、捜す気はないのか?―  彼は、私にそう問うた。その言葉に導かれるように、私は『兄』を捜すため、彼と共に、故郷を旅立った。  『面倒は見ない』と、彼はそう言っていたけれど、意外に面倒見が良いらしく、根が優しい人なのだと思うけど………。   ―如何せん、どうにも『言葉』が悪いのだ―  口は悪く、態度は尊大。『自信過剰』だと思えなくもないが、それを裏打ちする『強さ』は兼ね備えているので、あながち間違いではないけれど………。  私の意見も、『甘い』と言いつつ尊重はしてくれているようだし、パーティーを組む相手としては、頼もしいことこの上ないのだけど、『謎』が多いのも確か。  それが、『月光のセラ』との異名を取る、練達の剣士。今、私を『悪魔』のように恐ろしい形相で見下ろしている彼。  なまじ、顔の造作が整っている所為で、余計に『凄味』がまして、背筋が震えるほど怖い。 「………………俺が『何』を言いたいのか、わかっているか?」  口調こそ、あくまで冷静だけど、その表情と声で、彼が怒っているのは、わかっている………ので……… 「ごめんなさい………」
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