深淵の使者はかく語りき

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「贄を捧げることに最も没頭していたのは、黄園だったのではないですか?  あなたの指示を無視して、黄園は独断で『贄』と呼ぶ人々を大量に薬殺していた。  そんな黄園に『最後の贄』として黄園自身を指名したのは、あなた」  ……確かに、そうだ。  ツキナが帰ってくるかもしれないと思いながらも、そんなことは絶対にないと分かっていた。  だがオンラインゲーム時代からともにあった黄園は、いつしか『贄を捧げる』という行為そのものに没頭するようになった。  何もかもが、あの楽しかった時代と、変わってしまった。  疲れてしまったんだ。  ……だが 「『月ノ女神ノ復活ニ期ハ満チタリ   汝、最後ノ贄トシテ己ヲ捧ゲヨ』」 「っ!? なぜその文章を……っ!!  黄園はその文章を消去してから死んだはず……っ!!」  そう。  彼女が……ただの一介の新米刑事で探偵助手である依代が調べられる範囲に、その文面はなかったはずだ。
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