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そもそも、彼女の発言はおかしい。
『調べた』と軽く彼女は言うが、列挙された事実はそんなに簡単に知りえるようなものではない。
銀の鍵だって、簡単には入手できないはずだ。
「……今の発言、自白と取ってもいいですか?
自殺の指示を送ったこと、認めましたよね?」
「……それが、何ですか?
ただ『聞いた』というだけで、証拠になるとでも?」
「ええ」
彼女は私の言葉に笑みを深めると、スッと左手を前へ差し出した。
指から力が抜かれ、握られていた銀の鍵が、支えを失って落ちていく。
妙にスローモーションで流れていく景色の向こうで、パチンッと指が鳴らされた。
「『私』ではなく『みんな』が聞いていたなら……ね」
その音に叩き起されたかのように、部屋にある全てのパソコンの画面がパッと明るくなった。
その画面には、どこかの部屋が映っていた。
監視カメラの映像なのだろうか。
天井から部屋の中を映すアングルで、中心に置かれた机を挟んで男女が向き合って座っている。
だがその人物達はお互いを見ず、二人とも天井に顔を向けていた。
その表情は、驚愕に満ちている。
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