深淵の使者はかく語りき

15/16
前へ
/16ページ
次へ
 インカムの主に関して、私が知っていることは少ない。  相手がかつて世界を震撼させた天才ハッカーだということ。  今は刑務所の最奥、誰も知らない特別室にて服役中だということ。  その技術を生かして、警察の外部協力者をしていること。  しかしそれは自身の知的好奇心を満たすためにやっていることで、改心やら善行やらという概念は一切ないということ。  性格に難アリで、自分の興味のある事件にしか手を貸さないということ。  そして外界にコネクションとをるために『監視官』という名のメッセンジャー(下僕)を作るということ(それが私)。 「……ねぇ、毎回訊いてるけどさ。  私の一体何を気に入って、監視官に指名したわけ?  会ったこともないのにさ」  監視官に選ばれた人間には、なぜか多くの特権が認められる。  副業禁止の公務員という身分にありながら私がのあさんの探偵助手をやっていられるのは、その特権があるからだ。  そして相手の気分が向けば、こんな風に助けてもらえることもある。 『理由は多々あるが、語る必要性を感じない』 「……あっそ」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加