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「……あなたが何を言いたいのかが、まったくもって分からないのですが……」
「そう? では1つずつ説明しましょうか」
その震えを押し隠してとぼけると、依代は軽く肩をすくめた。
左手に銀の鍵を持ち、右手をもう一度ポケットの中へ滑らせる。
「のあさんの所に依頼をしてきた該・刻刃、そしてその弟の該・黄園は、創設当初から在籍している、幹部的存在だった。
……そのことに、間違いはありませんね?」
「確かにそうだが……
それがどうかしましたか?」
刻刃、黄園の兄弟が会員だったことは事実だ。
ここでとぼけてみたところで、意味などない。
兄弟が『銀月の会』が使用している建物にいたという証言はいくらでも出るだろうし、日記くらいは付けていたかもしれない。
「刻刃の死因は、リチウム中毒だそうです。
事件当時、看護師である本乃千頁に不審な動向、発言があったため、第一容疑者として捜査が進んでいます」
「それは御気の毒だ。
体調が悪いとは聞いていたが、まさかそんなことが……」
「その本乃を雇っていたのは、黄園だそうです。
雇用契約書が出ました。
……ですが、接点がないんですよね、黄園と本乃には」
『銀月の会』の会員だったこと以外には、と、依代は続けた。
彼女の右手は、いまだにポケットに入れられたままだ。
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