深淵の使者はかく語りき

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「……それが、何だというのですか?  そもそもその犯行だって、本乃の独断で行われたものかもしれないじゃないですか。  ……黄園が指示したという証拠でも?」 「いいえ?  ただ私は、分かっていることを説明しているだけにすぎません。  ではとりあえず、本乃と黄園の関係については、脇によけておきましょうか」  調子が狂う。  普段は気にならない、パソコンの冷却ファンが回る音が、今は妙に耳につく。 「さて。  荒木さんが『銀月の会の会員である』と認めた黄園ですが。  彼は生前、2つのサイトに頻繁にアクセスしていたことが分かっています」  その音の上を、依代の声が滑っていく。  私の耳に突き刺さる、深くて不快な声。 「1つは、『彼岸屋』という、オンラインゲームの課金アイテム販売サイト。  まぁ、違法サイトのようでしたけどね。  そしてもう1つは、『銀月の会』から特定のコードを打ち込むことによって飛ぶことができる、隠しサイト」  依代はその声で話を続けながら、ようやくポケットから右手を引き抜いた。 「母体であるオンライン・テーブルトークロールプレイング『銀月の会』の、ゲーム会場のページです」
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